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東日本大震災の被災地に見るリーダーと組織づくりの重要性

独立行政法人 中小企業基盤整備機構 震災復興支援部商業復興支援課長 / 長坂泰之

2014.05.24

東日本大震災が発生した翌月の2011年4月から震災復興の現場に入っている。当初は被災した工場、事業所、倉庫の応急処置対応、その後、主に製造業、物流業が本格復旧をするにあたっての支援、そして現在は主に商業復興の支援と3年余りが経った。

 

震災直後、被災地では多くの方々がどう行動してよいかわからず、現場で大きな混乱がいくつも起きた。特に、当時、国をはじめリーダーがしっかりとリーダーシップを取っていたら、様々な局面が大きく変わっていたであろうと思う。また、リーダーにビジョンや戦略がなければ(あったとしても聞こえてこなければないも同然)、組織は目標のない道をさまようことになることも震災直後に数多く見られたことである。

 

一方、過去に経験をしたことがないほどの被災をした現場で、勇敢に陣頭指揮を執っている自治体の首長、商工会議所の会頭、水産加工業などの製造業の社長、商店街の店主、居酒屋の大将の姿を見て、リーダーに求められる条件は「人間的な魅力」「強い想い」「行動力」「腹が据わっていること」の4つではないかと思っている。平時はリーダーの存在をあまり感じなくとも物事がうまく運ぶが、有事になると俄然リーダーの存在が重要となる。

 

1つ目の「人間的な魅力」は、地位とかカネとかではなく、「この人であればついていけるか」。人間的な魅力のある人に人はついていくのではないか。2つ目の「強い想い」は、復興に向かって立ちはだかる高いハードルを越えようとする「強い思い」を持っているかどうかが、困難を乗り越える重要な要素ではないかと思う。3つ目の「行動力」は、想いだけでなく、困難に向けてぶつかっていく力があるかどうか。最後の4つ目の「腹が据わっていること」は、人間としての太さ、困難にも動じない気持ちがあるかだ。

ただし、組織はリーダーだけでは回せない。PDCAのマネジメントサイクルのP(計画)がいくら素晴らしくても、実際にDCAを回すのはリーダーではなく組織の人間だ。組織とは組織のマンパワー(=能力×モチベーション)以上の成果は創出できない。

 

人口減少が著しいなかで、被災地が今後着実に復興を果たすためには、リーダーの存在と組織づくり(組織とひとづくり)両輪が欠かせない。微力ではあるが、今後も復興に向けて可能な限りの支援ができればと考えている。

 

陸前高田市中心市街地の被災地に立つ商業者のリーダー(2011.4撮影)

陸前高田市中心市街地の被災地に立つ商業者のリーダー(2011.4撮影)

 

商業復興会議で陣頭指揮を執る石巻商工会議所の会頭(2011.5撮影)

商業復興会議で陣頭指揮を執る石巻商工会議所の会頭(2011.5撮影)

 

大槌町役場/町長が亡くなった岩手県大槌町の中心市街地復興はスタートが半年遅れたと言われている(2011.10撮影)

 

長坂泰之(ながさか やすゆき)
1963年3月5日生まれ
◆地域活性化伝道師(内閣府)、タウンプロデューサー(経済産業省)、中小企業診断士(経済産業大臣登録)、◆地域活性化、中心市街地活性化、震災復興に関する講演多数、◆経済産業省、中小企業庁、国土交通省、陸前高田市などで委員等
著書として、「失敗に学ぶ中心市街地活性化」(共著)、「中心市街地活性化のツボ」、「100円商店街・バル・まちゼミ」(編著)(ともに学芸出版社)